今回は不眠症について書かせてもらいます。日頃から患者さんと話をする中で不眠症で悩まれている方が大変多くいらっしゃいます。布団に入ってもなかなか寝つけれない方、夜中に何度も起きてしまわれる方、朝早く目が覚めてしまう方、症状は人それぞれです。1日7時間前後の良質な睡眠をとると言うことは健康維持として大変重要な事です。すこしでも長く質の高い睡眠をとるためにはどうしたらよいかを考えていきたいと思います。
不眠で悩まれている人の割合
実際どのぐらいの方が不眠と感じているのか、その統計をみてみたいと思います。
厚生労働省の平成30年(2018)「国民健康・栄養調査」による「睡眠の状況」は以下となっています。
- ここ1ヶ月間、睡眠で休養が十分にとれていない者の割合は21.7%であり、平成21 年からの推移でみると、有意に増加している。
- 1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、男性34.5%、女性 34.7%である。6時間未満の者の割合は、男性36.1%、女性39.6%であり、性・年齢階級別にみると、男性の30~50 歳代、女性の40~60 歳代では4割を超えている。
平成30年(2018)「国民家・栄養調査」より
上の厚労省の資料を見てみても、実に5人に1人の方が睡眠で休養が十分にとれていないと感じており、その割合は平成21年度と比べても有意に増えてきているとのことです。
また睡眠時間の長さを見てみても1970年頃の日本人の平均睡眠時間が8時間前後であるのに対し、2010年以降は7時間前後まで減ってきています。
1970年頃は夜10時までに寝る人が7割方であったのに対して、2010年以降は3割弱になってきています。(NHK国民生活時間調査より)
睡眠不足になる原因を考える
ではどうして睡眠不足になるのかを考えてみたいと思います。人は加齢と共に睡眠時間が短くなっていく、これはよく言われることです。赤ちゃんとお年寄りを考えてても赤ちゃんの方が眠る時間が長いのは当然です。また、小学校の頃には10時間は平気で寝れたのに年を重ねるごとに7時間も寝れば自然と目が覚めてしまう、そういうことは良くあることかと思います。ただ、年齢が上がるとしても7時間程度の睡眠が取れないことは問題になってきます。そして睡眠時間をしっかりとる時間があるにも関わらず、寝たくても寝れない状況が問題となります。
寝る時間が遅い
原因としてまず上げられることが、早寝早起きが出来ていないということではないかと思います。上の統計でも分かるように日本人全体として布団に入る時間が遅くなっている傾向にあります。ところが、学校や仕事が始まる時間はかつてとそう変わらないので必然的に睡眠時間が短くならざるを得ません。1日8時間以上の睡眠を求めていらっしゃる方にとってはそれだけで不満につながります。
寝る時間が早い
逆に寝る時間が早すぎる方も多いです。こちらは仕事を引退された70歳以上の方に多いかと思うのですが、自分は寝れないと言われる方によくよく話を聞いてみると夜は7時に布団に入っているという方がおられます。それでいて夜中の3時に目が覚めてしまって寝れない。それはそうですよね・・・。赤ちゃんでないかぎり1日10時間以上の睡眠を毎日取れるかというとなかなか難しと思います。
遅くまでテレビやスマホを見てしまう
これも現代社会には大変良く聴くことですね。特にスマホは常に手元に置いておかないと不安になってしまうような時代なので寝る直前まで見てしまいます。目から入る光の刺激は脳を活性化させてしまいます。人間が睡眠に入るときは興奮を司るする交感神経が弱まり、逆に抑制を司る副交感神経が強くならないといけないのですが、そのスイッチがなかなか変わらないので、布団に入ってもなかなか寝付けないことにつながります。
運動不足
現代社会はデスクワーク、また昨今のコロナ禍においてはテレワークなどで家からでない、通勤も電車から自動車になったりすると体を動かすことがおのずと少なくなっています。人間はある程度適度な運動をして体を疲れさることにより、夜になると疲れた体を休めさせようと自然とリセット機能が働くのですが、そもそも体が肉体的に疲れていないのでそのスイッチが入りません。
朝日を浴びていない
人間の体は太陽に大変影響を受けており、睡眠もその一つです。メラトニンという体内ホルモンが睡眠を調整しており夜間に暗くなると急激に上昇してくるのですが、朝日をしっかり浴びることでメラトニンの生成をしっかりと抑え、15,6時間後にメラトニンが急激に上昇してくるようなリズムが作れます。
良質な睡眠をとるための対処法
生活のリズムを太陽に合わせる
仕事上昼夜逆転をせざるを得ない方はなかなか難しいですが、そうで無い方はなるべく太陽の動きに合わせた生活を心がけてください。
朝起きたらまずカーテンや窓を開けて朝日を体一杯に浴びるようにしてください。すると体は睡眠から活動にスイッチが入り、交感神経が活発に働きます。
太陽が沈んだら光などの目からの刺激をなるべく避けて副交感神経が活発になるように睡眠のホルモンであるメラトニンがしっかり上昇するようにします。
夜はなるべく目から光をとりすぎない生活を
こちらも先ほどの説明と被りますが、夜間にメラトニンを上昇させるためには光をなるべくとらないようにしないといけません。テレビやスマホは寝る前にはなるべくみない。本を読むなどして脳を鎮静させる方向に働かせてください。
体温の変化も重要
寝付きにとって体温変化も大変重要です。特にお風呂に入って体を温めてから体温は徐々に下がっていくのですが、下がっていく時に眠気も出てきやすくなります。ですからお風呂から上がってある程度体温が下がってく途中に布団に入ることにより眠気が訪れやすくなります。
寝る前はストレッチなどで体をほぐす
寝る前にストレッチも効果的です。ストレッチをすることで体の血行が良くなり、体温も上昇します。その状態で布団に入ることにより体温が下がってくるのでそれに伴い眠気を催し安くなります。
適度な運動、バランスの取れた食事
こちらは睡眠だけでは無く健康な体の維持には欠かせないことですが、やはり人間は動いてお腹を空かせてバランスの良い食事をとることが大変重要です。特に現代社会は自分から積極的に運動を取り入れていかないといけない時代ですので、毎日ストレッチでもいいので体を動かす習慣を付けてください。
まとめ
今回は睡眠について考えてみましたが、以前に比べて24時間営業が当たり前の業種が増えてただでさえ体内時計が狂ってしまいがちな世の中です。自然にリセット出来ていた自分の体を自らコントロールしてリセットしないといけない時代になっています。是非、健康な生活を維持して頂くために今一度生活を見直してみてください。
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